Artist Interview | 宮田彩加

Artothequeに作品を登録している作家たちの姿をお伝えするシリーズ。
今回は現代刺繍作家の宮田彩加さんです。
昨年に手刺繍とミシン刺繍によるバグを対比させ「エラー=失敗の行為」によって新たに生まれる価値観を模索したシリーズ「WARPⅡ-エルンスト・ヘッケルへのオマージュ-」(http://artotheque.jp/dyeing/123.html)から2作品がアルトテックに登録され、先月新たに同WARPシリーズの初期作品「野菜WARP」が10点登録。早速、10点全てが京都経済同友会事務局に設置されることになりました。
10月には京都で個展、東京で巨大グループ展への参加も決定し、キャリアを順調に伸ばされている宮田さん。作家としての歩み、制作について詳しく伺いました。

 

【作家になるまで】
幼い頃から図工が好きで、小・中学校時代に既に芸大に行きたいと思っていました。そして、色を使う作業が好きだったので、染織コースを選択しました。京都造形芸術大学の染織コースは設備が整っていたことも理由のひとつです。
2回生になると染専攻か織専攻か選択するのですが、私は染を選びました。自分で布をデザインして自分で染める作業を楽しんでいました。
しかし、制作をする中で「物理的なマス(質量)を出したい」と思うようになり、染の布にボリュームを出そうと考えました。それまでの制作方法では奥行きを付けることは可能ですが、「マス」を出すことは出来ませんでした。そして、突然「デコラティブ(装飾的)」なことへ思考が向き、3回生で刺繍ゼミを専攻することになります。

育った環境を考えても、いつも祖母がパッチワークを、母は刺繍をしている環境だったので、自分自身も幼少期から刺繍をしていました。そこで、染の布に手刺繍を始めます。刺繍という行為は、費やす時間が糸の厚みとなって現れるものです。「時間の蓄積=糸の厚み」ということです。
私は細かい作業をひたすら続けることが大好きなので、4回生になり卒業制作へと移行する際には更に刺繍という作業が私にしっくりときました。

卒業制作では 「擬態」(*画像①)を完成させました。自分でも「やりきった!」という思いで、卒業制作展では賞を頂いたシリーズです。

祖母のパッチワークの材料となるアンティークの布が家に溢れかえっているのですが、今の既製の布にはありえない様な柄ばかりです。ある日、その布たちを眺めている時に、動物園の爬虫類館で目にしたトカゲの擬態している様子が思い浮かびました。
「擬態している爬虫類の様子と柄が布から浮き上がる様子が重なり合った」と思うと、続いて「バリオンステッチがトカゲの凹凸と似ている」と思い、全てが合致しました。

画像①「擬態-ジャクソンカメレオン-」

【作家として生きていく】
まず、学部の卒業制作において自分の中では4年間の集大成を築き上げていたので、「学ぶべきことは学んだから次は労働!」と決めていました。学生として制作を続けていくよりは、社会人として生きる経験を積みたかったのです。
私にとってはアーティストとして生きて行くのは非現実的で、生計を立てる方法も全く分からず夢物語でしたし、就職を希望していた会社に内定を頂いたので、スムーズに働き始め、仕事の内容もOL生活も満喫していました。

しかし、就職後に、「卒業制作展出品の作品価格を教えてほしい」や「アートフェアに出しませんか?」などの作家活動に関連した話がポツポツと登場し、「自分の人生は本当にこれでいいのか?」と考えるようにもなり、一か八かで大学院を受験しました。

 

【注目のシリーズ「野菜WARP」と「WARPⅡ-エルンスト・ヘッケルへのオマージュ-」 】
学部時代に手刺繍での制作は既に自分の中で満足していたので、刺繍を追求したいけれど、何ができるだろうと悩む中で、ミシン嫌いにも関らず、あえてミシンを取り入れようと思いました。
これまでの「手作業」と「時間の蓄積」へのこだわりとは正反対に、現代のテクノロジーを利用したデジタルなミシン作業を選びました。現代のミシンはかなり賢く、誰が縫おうとも同じクオリティに出来上がるため、「その中で私ができることは?」と問いを持つことがきっかけとなりました。

具体的には、均一の針目を崩すことや、フラットに縫い上げる特徴を崩すことが可能か考え始め、「バグ」を加えることでそれらの破壊が可能だと行き着きます。「エラー:失敗の行為によって新たな価値観が生まれる」を根本にした「WARP」シリーズがそこから生まれました。

「WARP」シリーズでは、縫い込まれた糸の断面が見える状態になっています。刺繍データ上で一部にバグを加えると、ミシンの糸がワープするという技法を編み出しました。ワープによって、残像のようにバグによる空白の部分が糸で視覚化される状態を、身近な行為に寄せて表現したいと思い、「野菜をカットする行為とプロセス」を選びました。WARPシリーズ第一弾の「野菜WARP」(*画像②)です。

「WARPⅡ-エルンスト・ヘッケルへのオマージュ-」(*画像③)は「野菜WARP」 完成後にすぐアイデアが出てきました。

「ワープの行為」について考えている時、以前から好きだったエルンスト・ヘッケルのドローイングを思い出しました。対称性と秩序をテーマに描いたヘッケルのドローイングは、シンメトリーで精密に描かれており大変魅力的です。そこで、WARPシリーズのコンセプトに沿って美しいシンメトリーを崩していこうと試みます。ワープによって、崩し、生み出す。いかに新しい形態を生み出せるかという実験シリーズが始まりました。

「野菜WARP」では、全色の糸が一度にワープするようにバグを加えていますが、「WARPⅡ-エルンスト・ヘッケルへのオマージュ-」はワープする糸を特定し、更に糸の層が断面的に視覚化されるよう試みました。

画像②「野菜WARP-ドラゴンフルーツ-」

画像②「野菜WARP-ドラゴンフルーツ-」

画像③「WARPⅡ エルンスト・ヘッケルへのオマージュ -カラーヌス2-」

画像③「WARPⅡ エルンスト・ヘッケルへのオマージュ -カラーヌス2-」

 

 

【作家としての現在】
今の私は作品のクオリティを上げることに重点を置いて制作活動を行っています。ひたすらアトリエに引きこもって、制作をしているので、展覧会へお越し頂く方とお話し、着実な繋がりが生まれて行くことが何よりも嬉しいです。
しかし、作り続けることが一番大変です。目が覚めたら、何も作れなくなっているのではないかという恐れはいつもあります。

マネージメントを自分ですることも大変です。搬入搬出のサポートから、DMのデザインなど、どう仕上げていくか。コミュニケーションをとりながら、サポーターにいかにして協力してもらえるかが大切です。

 

【これから】
活動の幅をもっともっと広げていきたいと思っています。留学も視野に入れていますし、発表の場も、京都ー東京ー海外へと。ただ、今は作品のクオリティをあげることしか考えられません。環境が変化しようと、やはり作品で勝負です。どんな作品が良いかというより、発表する度に新鮮で、私の作品の変化自体を楽しんでもらえるような制作活動を続けたいです。

20148月某日 インタビュア:柳生顕代

<作家プロフィール>

宮田彩加  Miyata Sayaka
京都生まれ。2012 年京都造形芸術大学大学院修了。 大学で染織を専攻したことがきっかけで、染めた布に奥行きやボリュームを出す為に刺繍に興味 を持ち、2007 年からプリント生地を背景に生物が擬態した様子を手刺繍した「擬態」シリーズの制 作を手掛ける。 大学院に進学した際に刺繍の可能性を探究する為にミシンを取り入れ、ミシン刺繍特有の均一な 針目を崩すことで糸の歪んだ層を見せる「WARP」シリーズや、支持体の布を一切使用せず、ミシ ン糸のみで構成した「Knots」シリーズの制作も行っている。 近年の主な個展は 2013 年「WARP×Knots-エルンスト・ヘッケルへのオマージュ-」 (GALLERYGALLERY EX,京都)、「生命力と形態」(渋谷ヒカリエ,東京)、「SayakaMiyataExhibition」 (京都造形芸術大学 bixko_kitchen,京都)、2012 年「WARP」(KaruizawaNewArtMuseum,長野)な ど。 2014 年 10 月には「THE MIRROR」(名古屋商工会館,東京)にも出品予定。 受賞歴は 2014 年「京展」京展賞、「KUAD graduates under 30 selected」KUAD オーディエンス賞、2008 年「京都造形芸術大学卒業制作展」瓜生山賞・混沌賞・学科賞。

ダウンロード:宮田彩加経歴

 

<今後の展覧会予定>(2014年9月末現在)

【個展「生命力の形態と対称性」】
10月14日(火)-10月19日(日)
12:00-19:00(最終日は18:00まで)
ギャラリー恵風1F(京都市左京区丸太町通東大路東入ル南側)
生物の形態美とミシン刺繍の特性を重ね合わせて生み出した新作を展示予定です。

<詳細>
https://www.facebook.com/gallerykeifu?fref=ts
http://keifu.blog86.fc2.com/

【THE MIRROR】
10月16日(木)-11月9日(日)
月曜休館 ただし11月3日(月・祝)は開館

Aチケット:13:00-17:00 ※本展覧会は完全予約前売りチケット制です。当日券の販売はありません。
Bチケット:17:00-21:00 ※2部入れ替え制 1日限定400人
入場料¥1000 チケットぴあにて発売 (Pコード:763-188)

名古屋商工会館 (東京都中央区銀座4丁目3番6号)
東京では初出品となるインスタレーション作品を展示予定です。

<詳細>
https://www.facebook.com/the.mirror.ginza?fref=ts
http://the-mirror-ginza.com/